単位およびその表記方法について
2004年7月23日 村田
1.
物理量と単位
理工学で扱う物理量(長さ,質量,速さなど)は単位を持ちます.例えば長さが”1”と言うだけでは不十分で(1m, 1feet, 1yard, 1mm, 1μmのどれだか不明),”1m”と単位をつけて表記することであいまいさがなくなります.
単位系についてはSI単位系(国際単位系)が標準の単位系として使われています.SI単位系では,長さをメートル(m),質量をキログラム(kg),時間を秒(s),電流をアンペア(A),熱力学温度をケルビン(K),物質量をモル(mol),光度をカンデラ(cd)という7個の基本単位を用います.また10の整数乗倍を表す接頭語として103倍をキロ(k),106倍をメガ(M),10-3倍をミリ(m), 10-6倍をマイクロ(μ)などで表します.例えばkmはmの103倍の長さを表す単位となります.
2.
単位の表記方法
2.1
数値の単位表記
長さを表す数値の表記方法として次のうちどれが正しいのでしょうか?
1.2
1.2m
1.2[m]
物理量は単位をもつので数字だけ書く1番目の表記が不十分なのは理解できると思います.数字と単位記号の二つが揃って物理量だという考え方に従えば2番目の書き方が正しく,3番目の場合には括弧[ ]が不要だということが分かります.
2.2
物理量の記号の単位表記
数式を表す際に様々な物理量を記号で表します.例えば長さをLで表すときに,「長さL[m]」というように括弧[ ]をつけて単位記号を示します(単位には角括弧[ ]を用いる場合が多いです).こうすることでLはメートル単位であることがわかります.括弧をはずして,「長さL m」と表記するとどうでしょうか?数字と単位記号の二つが揃って物理量だという考え方に従えば,この表記法だと単位を2回宣言してしまっていることになります(Lは長さという物理量を表す記号なのでそれ自体単位の概念を含むと考えるのが自然なので).2回宣言する必要はないので,最初の書き方で良いことになります.
2.3
式における単位表記
さて,ここまでは大きな混乱はないはずですが,式となると単位表記が難しく,かつ混乱してきます.
例えば,1Nの力で1m物体を移動させるのに必要な仕事Wを計算してみましょう.
W=(1N)x(1m)=1 J (1)
ここで,W:仕事[J]
W[J]=1 x 1 = 1 J (2)
W[J]=1[N] x 1[m] = 1 [J] (3)
W/J = 1 x 1 =1 (4)
この他にも表記法の組み合わせはありますが,省略します.ここまでの考え方に従えば式(1)が一番妥当そうです.式(4)は単位記号を単位量として物理量の記号と同等に扱うことで(左辺で割り算して)無次元にしているものです.
しかし式(1)の表記方法では,式が複雑になったときに全ての数字に単位記号をつけるのは煩雑すぎます.また,右辺に記号と数字が混ざった式になった場合にはどうすれば良いのでしょうか?この問いに対する絶対的な解答はありません.分野によっても単位表記の方法については違いがあります.そこでここでは見易く,かつ単位の意味が明確になる以下の表記方法を推奨します.
・推奨する単位表記方法
物理量の記号については但し書きで意味と単位を定義する.
推奨例) ここで,W:仕事[J], F:力[N],
L:長さ[m] とする.
式においては以下のように数字だけの部分および数字と記号の混合部分での単位表記を省略する.また,最後の答えの数字については括弧なしで単位記号を明記する.
推奨例) W=FxL=1x1=1J
以上.